マリーナ・アンボカーゼ

女史

恩師マリーナ先生と
恩師マリーナ先生と

 ここでは,当教室の名前にもなっています、(師にはお名前の許可をいただいでいます。)私達を娘のように愛情を込めて育ててくださった恩師マリーナ・アンボカーゼ女史について書きたいと思います。

私達はマリーナ・アンボカーゼ女史から,リスト・ジロティ楽派の計り知れない価値のあるメソッドを受け継いだと同時に彼女のピアノ教育に対しての精神,教育メソッドも受け継いでいます。

~女史との出会い(高橋若菜)~

高校の音楽科の修学旅行で行ったクロアチアの美しさに魅了され,「こんなところで音楽を勉強したい」と思い,高校卒業後思い切って単身でクロアチアへ。そこでは,マリーナ・アンボカーゼ女史との運命的な出会いが待っていました。

マリーナ女史に出会う前,実はずっと私には抱えていた悩みがありました。それは,”脱力”です。体に無駄な力が入ってなかなか思うような音が出せない。体がかたいために長時間練習すると,腕が痛くなる,またそのためにテンポが速い曲が弾けなかったりと弾きたいと思う曲もなかなか弾けませんでした。

そんな私の問題を「体がかたい」「もっと体を楽にして」という言葉を一切使わず,無理だと思っていた”脱力すること”へ

導いていってくださったのが,マリーナ・アンボカーゼ女史が教える「リスト・ジロティ楽派」の奏法だったのです。 


~目から鱗が落ちる奏法~

最初の一週間は,まるで初めて習うピアノ初心者のようなレッスン。手のフォームから腕の使い方の細かな説明。鍵盤のどの辺に指をおいて打鍵するのか。など繰り返し,繰り返しスケールを弾きながらの練習。まずは,これだけを一週間練習しました。

そして少しずつ曲を選んでの練習へ。一ヶ月もしないうちに,自分の音色が変わっていくのが実感できました。

ずっと「あなたは体がかたい」「もっと楽にして」と言われ様々な方法を試しても出来なかった”脱力”。まさに目から鱗でした。

けれど,こんな問題を抱えていた私のためにこのようなレッスンをしたというのではありません。

まずマリーナ女史に初めてつく学生はみんなこのレッスンを受けます。このようにいちから教えていくのがリスト・シロティ楽派の奏法なのです。                  

~音に魂が宿る~

マリーナ女史から大切なことをたくさん学びましたが,その中でも先生が一番レッスンでこだわっていたことは,「音には魂が宿る」「演奏者は一音一音魂を吹き込みながら演奏すること」です。

マリーナ女史がレッスンで弾いて見せる演奏は,聞こえてくる音色という次元を超えマリーナ女史の魂に触れているかのような感覚。彼女の世界にあっという間に引き込まれ異次元へと連れて行かれます。

実際のレッスンでは,一音一音先生が追求する音が出るまで,何度も何度も弾き直させられました。一音一音こだわることで,ハーモニーが美しく響き,メロディーを心を込めて歌うように弾けるのです。また,作曲家達が曲に残したメッセージを読み解いていきながらも,マリーナ女史は生徒一人一人の人間性を大事にする先生でもいらっしゃいました。人間とは,十人十色。自分独自の想いを込めて演奏することによって,その人が持つ個性,人間性が曲に現れます。

マリーナ女史と女史のご主人ジョルジュ氏
マリーナ女史と女史のご主人ジョルジュ氏

~誉める教育~

私がマリーナ女史に師事してから,初めに驚いたことは,「たくさん誉める」ということです。どんな小さなことでも,女史が指導したことができるとまず「ブラボー!」と言ってくれるのです。

マリーナ女史が使うたくさんの誉め言葉の中で,一番心に残っているのは,

「あら,あなた以外に今のような演奏誰ができるかしら?」

「なんて素敵な演奏!あなたの演奏一日中聴いていられるわ!」

です。そしてこんなとっておきな誉め言葉を心を込めて言ってくれるのです!

新しく始めた曲に対しても,「なんて素晴らしい曲!あなたが弾いたらもっと素晴らしくなるわね!」などの豊かな言葉の表現で,生徒の自信を引き出していらっしゃいました。また,自信を引き出すことによって,生徒の独創性が生まれてくるのです。誉める教育によって私達生徒と先生の信頼関係はとても厚いものでした。

~世界的ピアニスト,イーヴォ・ポゴレリチの師~

マリーナ女史は,日本でもファンが多い世界的ピアニスト,イーヴォ・ポゴレリチの師でもあります。

ポゴレリチ氏は,リスト・ジロティ楽派直系のグルジア人ピアニスト,アリス・ケジュラッゼ女史に薫陶を受け,その特異な彼の才能が急速に開花します。しかし1996年にケジュラッゼ女史は急逝してしまいます。

マリーナ女史とポゴレリチ氏の師であったケジュラッゼ女史は,実は同じ門下生。二人の師であるロシア人ピアニスト,ニナ女史からリスト・ジロティ楽派奏法を受け継ぎました。

ケジュラッゼ女史が急逝した後,ポゴレリチ氏の師となったのがケジュラッゼ女史同様にリスト・ジロティ楽派直系のグルジア人ピアニスト,マリーナ・アンボカーゼ女史だったのです。

また、マリーナ女史についてポゴレリッチ自身、2005年の来日インタビューで、「別の金のスプーンで、同じ飲み物を飲むような体験だった。若いころには妻から、そして成熟したのちにはマリーナから、同じ純粋な知識を学ぶことができて幸運だったと思う。」と語っています。